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第4章: 出産

2026年4月のある朝、妻が「なんか、来たかも」と静かに言いました。

看護師として冷静でいようとする妻と、頭が真っ白になりかけている夫。対照的なふたりでしたが、事前に準備していたおかげで、落ち着いて行動に移すことができました。入院バッグを手に取り、病院に連絡し、タクシーを呼ぶ。練習していた通りの手順でした。

陣痛は、最初は不規則で穏やかなものでしたが、時間が経つにつれて強く、間隔が短くなっていきました。

妻が痛みに耐えている間、夫にできることは限られていました。腰をさすること、水を差し出すこと、「大丈夫、一緒にいるよ」と声をかけること。無力さを感じながらも、そばにいることの大切さを実感した時間でした。

数時間の陣痛を経て、ついにその瞬間が訪れました。

小さな産声が分娩室に響いたとき、時間が止まったように感じました。看護師として何度も新生児を見てきた妻が、自分の赤ちゃんを胸に抱いた瞬間、これまで見たことのない表情で泣いていました。夫も、気づいたら涙が止まりませんでした。

カンガルーケアで肌と肌を合わせたとき、赤ちゃんの温もりとかすかな鼓動が伝わってきました。「この子を守っていこう」——言葉にしなくても、ふたりの心はひとつでした。